同じ名前でも全く別の神社!宇都宮と日光の二荒山神社

栃木県には「二荒山神社」という同じ名前の神社が2つ存在します。
日光市の「日光二荒山神社」と宇都宮市の「宇都宮二荒山神社」です。
一見、同じ名前なので混同されがちですが、実はこの2つはまったく別の神社なのです。
この記事では、栃木県民でさえ混乱することがある2つの二荒山神社の違いについて、読み方や祭神、歴史、ご利益など、様々な角度から詳しく解説していきます。
最大の違いは「読み方」と「場所」
読み方の違い
2つの二荒山神社の最も基本的な違いは、その読み方にあります。
- 日光二荒山神社:ふたらさんじんじゃ
- 宇都宮二荒山神社:ふたあらやまじんじゃ
同じ漢字でありながら読み方が異なるため、地元の人々は区別のために日光や宇都宮という地名を付けて呼んでいます。
また、宇都宮二荒山神社は地元で親しみを込めて「二荒さん」「ふたあらさん」と呼ばれることもあります。
鎮座地の違い
2つの神社は、まったく異なる場所に鎮座しています。
日光二荒山神社は、世界遺産「日光の社寺」の一角として、日光東照宮や輪王寺と共に厳かな杉木立の中に位置しています。
男体山(古名を二荒山)を神体山とする山岳信仰の聖地であり、日光連山や華厳の滝、いろは坂を含む広大な神域を持ちます。
一方、宇都宮二荒山神社は、栃木県の県庁所在地である宇都宮市の中心部、通称「明神山」と呼ばれる標高約135メートルの小高い丘の上に鎮座しています。
街の中心にありながら、緑豊かな静寂に包まれた都市のオアシスのような存在です。
祭神とご利益の違い
日光二荒山神社の祭神とご利益
日光二荒山神社では、主祭神として大己貴命(おおなむちのみこと)をお祀りしています。
大己貴命は、出雲大社の祭神としても知られる大国主神の別名で、国造りの神様であると共に、縁結びの神様として大変有名です。
配神には田心姫命(たごりひめのみこと)と味耜高彦根命(あじすきたかひこねのみこと)がお祀りされています。
このため、日光二荒山神社は良縁、恋愛成就、夫婦円満、家庭円満といった、人との縁に関するご利益を願う多くの参拝者で賑わいます。
また、大己貴命は福の神・幸運の神様でもあることから、開運招福や商売繁盛のご利益も期待できます。
宇都宮二荒山神社の祭神とご利益
宇都宮二荒山神社のご祭神は、豊城入彦命(とよきいりひこのみこと)です。
豊城入彦命は、第10代崇神天皇の第一皇子で、東国を平定するために派遣されたとされる武勇に優れた神様です。
相殿には大物主命(おおものぬしのみこと)と事代主命(ことしろぬしのみこと)がお祀りされています。
そのため、宇都宮二荒山神社は、勝負運、必勝祈願、武運長久といったご利益で知られています。
藤原秀郷、源頼義、源義家、源頼朝、徳川家康など著名な武将らも戦勝祈願をしたと伝えられています。
また、地域を開拓し、産業や文化の礎を築いた神様であることから、事業繁栄、リーダーシップ発揮、厄除け、交通安全など、現代社会を力強く生き抜くための幅広いご利益をいただけるとされています。
創建の歴史と由緒の違い
日光二荒山神社の歴史
日光二荒山神社は、奈良時代の767年(神護景雲元年)に、僧侶である勝道上人(しょうどうしょうにん)によって創建されたと伝わります。
男体山(古名を二荒山)を修行の場とし、山そのものをご神体とする山岳信仰の聖地として発展しました。
勝道上人は782年(延暦元年)に二荒山登頂に成功し、山上に奥宮を建立。
その後、中禅寺湖畔に中宮祠を建てました。平安時代に編纂された『延喜式』神名帳にもその名が記されている、由緒正しい古社です。
江戸時代には、徳川家康を祀る東照社(日光東照宮)が創建されると、二荒山神社も江戸幕府や朝廷、諸大名、民衆から厚い崇敬を受けました。
1619年に徳川秀忠によって本殿が再建され、現在の社殿の多くはこの時代に造営されたものです。
宇都宮二荒山神社の歴史
実は宇都宮二荒山神社は、日光二荒山神社よりもさらに古い歴史を持ち、その創建は約1600年前の古墳時代、353年(仁徳天皇41年)に遡るとされています。
下野国造(しもつけのくにのみやつこ)である奈良別王(ならわけのきみ)が、祖先である豊城入彦命を氏神として祀ったのが始まりとされます。
平安時代から戦国時代にかけて、約500年間にわたって宇都宮氏の氏神として崇敬され、地域の政治・文化の中心であり続けました。
幕末の戊辰戦争では、土方歳三ら旧幕府軍がこの神社を拠点に宇都宮城攻防戦を繰り広げ、社殿が焼失するという歴史の舞台となりました。
そのため、現在の社殿は明治10年(1877年)に再建されたものとなっています。
両神社の関係性について
直接的な関係はない
これまで見てきた通り、2つの二荒山神社は祭神が異なり、名称の由来も異なるため、全く別の神社とされています。
しかしながら、両社とも下毛野氏にゆかりの深い神社であるという点では共通点があります。
古くから混同されることも多く、鎌倉時代の1219年に成立した説話集『続古事談』には、「宇都宮は権現の別宮なり」という記述があります。
また『平家物語』では、那須与一が屋島の戦いで扇の的を射る際に「日光権現、宇都宮、那須の温泉大明神」と唱えて祈ったという記述があり、これらはいずれも宇都宮二荒山神社を日光二荒山神社の別宮と誤解したうえでの記述ではないかとされています。(諸説あり)
延喜式神名帳の論社問題
平安時代中期の『延喜式神名帳』には名神大社として「下野国河内郡 二荒山神社」の記載がありますが、その帰属を巡って両社の間で議論があります。
明治時代には、この論争が社格に影響を与えました。明治4年に「二荒山神社 下野国」として国幣中社に列していた宇都宮二荒山神社が、日光二荒山神社が式内社とみなされたことで明治6年に県社に降格したという経緯があります。
その後、明治16年(1883年)に宇都宮二荒山神社も式内社論社として位置付けられ、あらためて国幣中社の社格に復帰しました。
現在は両社とも式内名神大社・下野国一宮を称しています。
世界遺産登録と文化財
日光二荒山神社は世界遺産
日光二荒山神社の境内は、東照宮、輪王寺の境内とともに「日光山内」として国の史跡に指定され、1999年に「日光の社寺」として世界遺産に登録されています。
本殿や拝殿などの主要な社殿は国の重要文化財に指定されており、日光山内の入り口を飾る木造朱塗りの美しい橋「神橋」も二荒山神社の建造物で、世界遺産の構成資産となっています。境内には国宝指定の刀剣2口や多数の重要文化財が現在に伝えられています。
宇都宮二荒山神社の文化財
宇都宮二荒山神社は世界遺産には登録されていませんが、「二荒山神社の神楽」が栃木県指定無形民俗文化財に指定されています。
江戸時代中期に起源を持ち、毎年1月・5月・9月の3回奉納される伝統行事です。
また、境内の「明神の井」は宇都宮の名所「七木七水八河原」のひとつで、明治天皇が行幸された際に茶の湯として使用したと伝えられています。
見どころとパワースポット
日光二荒山神社の見どころ
日光二荒山神社は縁結びのパワースポットとして、境内に多くのご利益スポットがあります。
神門前にそびえる縁結びの御神木は、杉と楢の木が合体した不思議な木で、「好き(杉)なら(楢)一緒」として縁結びのご利益で知られています。
拝殿の向かいには、1本の木の根から2本の木が伸びている夫婦杉、3本の木が伸びている親子杉もあります。
神苑には、輪投げや運勢を占うお菓子のルーレット、ハート形の木板に願いを書いてご縁柱に投げて当てる良い縁ハート投げなど、運試しができるスポットも点在しています。
また、若返りの水ともいわれる「二荒霊泉」や「子授け安産の石」なども人気です。
別宮の滝尾神社には「運試しの鳥居」があり、鳥居の上部の丸い穴に小石を3つ投げ、何個通るかで運を占うことができます。
宇都宮二荒山神社の見どころ
宇都宮二荒山神社の境内には、本社以外に12社の末社があり、学問、安産、豊穣などの神様が祀られているので、様々なご利益を得ることができます。
初辰稲荷神社や山王社など、それぞれの末社でお参りすることで、幅広いご利益が得られます。
また、明神の井の清らかな水も見どころのひとつです。
宇都宮らしい餃子おみくじも人気で、箸でつかんでおみくじを引くスタイルで、餃子の皮を模した包み紙を開けると「しあわせ餃子の縁起物」とおみくじが入っています。
縁起物は「水餃子(学業成就)」「焼餃子(金運上昇)」「翡翠餃子(厄除健康)」「海老餃子(恋愛成就)」「胡麻餃子(運気上昇)」の5種類です。
また、宇都宮市の郷土玩具「黄ぶな」をモチーフにしたお守りや御朱印もあり、無病息災を願う縁起物として人気を集めています。
御朱印とお守り
日光二荒山神社の御朱印
日光二荒山神社では、本社をはじめ、中宮祠、奥宮それぞれで御朱印をいただくことができます。
世界遺産の神社らしい格調高いデザインが特徴です。
宇都宮二荒山神社の御朱印
宇都宮二荒山神社では、通常の御朱印のほか、相殿の大物主命(大国さま)と事代主命(恵比須さま)が描かれた福の神御朱印(2枚1組で初穂料1,000円)が人気です。
季節や行事で頒布される特別御朱印もあり、拓版画家による版画デザインの御朱印や、黄ぶなをモチーフにした疫病退散の見開き御朱印など、バリエーション豊かな御朱印が用意されています。
オリジナルの御朱印帳も2種類頒布されており、初穂料は2,000円(御朱印代込み)です。
お守りの種類
日光二荒山神社では、縁結びに特化したお守りが人気で、良縁を願う多くの参拝者が求めています。
宇都宮二荒山神社では、43種類ものお守りを受けることができます。
交通安全、学業・仕事、勝負事、身体健全・厄除け、開運など、ご利益の種類が豊富です。キーホルダータイプの必勝守りや、黄ぶなをモチーフにしたかわいいお守りも人気です。
アクセス方法
日光二荒山神社へのアクセス
JR日光駅または東武日光駅から世界遺産めぐりバスで12~15分、「大猷院・二荒山神社前」バス停下車すぐです。
日光東照宮から徒歩約4分、輪王寺から徒歩約7分の距離にあるため、2社1寺を巡る観光に最適です。
宇都宮二荒山神社へのアクセス
JR宇都宮駅からバスで約5分、「馬場町(二荒山神社前)」バス停下車すぐです。
徒歩の場合、JR宇都宮駅から約20分、東武宇都宮駅から約15分です。
車の場合、東北自動車道「宇都宮IC」から約25分、「鹿沼IC」から約20分です。
境内の裏手に有料駐車場(60分300円)があり、ご祈祷の方は3時間無料となります。
参拝のおすすめ時期
日光二荒山神社のおすすめ時期
春には4月に行われる弥生祭が有名で、色とりどりに飾られた花家体(はなやたい)が、にぎやかなお囃子とともに日光地域の市街を練り歩き、日光に春の訪れを感じさせてくれます。
秋の紅葉シーズンも美しく、境内の杉木立と紅葉のコントラストが見事です。
男体山の奥宮への登拝は4月25日から11月11日までの開山期間に可能です。
宇都宮二荒山神社のおすすめ時期
初詣の時期は多くの参拝者で賑わいます。また、七五三や受験祈願など、暮らしの節目ごとに多くの市民が参拝します。
夏には「夏詣」の特別御朱印が授与され、秋には菊水祭が行われるなど、四季折々の行事が楽しめます。
まとめ:2つの二荒山神社、それぞれの魅力
日光二荒山神社と宇都宮二荒山神社は、同じ名前を持ちながらも、それぞれが独自の歴史と個性を持つ別の神社です。
日光二荒山神社は、世界遺産に登録された山岳信仰の聖地で、縁結びのご利益で知られ、日光東照宮と合わせて観光することができる魅力的な神社です。
宇都宮二荒山神社は、約1600年の歴史を持つ下野国一宮で、勝負運や必勝祈願のご利益で知られ、宇都宮市民の心のよりどころとして親しまれている神社です。
栃木県を訪れる際には、2つの二荒山神社それぞれの特徴を理解したうえで参拝すると、より深く栃木の歴史と文化を感じることができるでしょう。
それぞれの神社が持つ独自の魅力とご利益を求めて、ぜひ両方を訪れてみてください。